視点・コラム

産業医の日常業務の背景にある考え方や、企業ご担当者からよくいただくご質問について、代表産業医が執筆したコラムです。安全配慮義務・予防法務・ストレスチェック・契約形態など、実務判断の指針をお示しします。

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記事一覧

01 産業医論 | 約4分

産業医は「イエスマン」ではありません — 安全配慮義務の履行補助者としての役割

企業ご担当者から「産業医は会社の味方か、従業員の味方か」と問われることがあります。私は、いずれでもなく、貴社の安全配慮義務を支える履行補助者であるとお答えしています。

02 予防法務 | 約4分

医学だけでは解けない問題があります — 産業医に法務リテラシーが必要な理由

休職期間の設計、復職判定の書面化、就業上の措置の記録。これらは医学の問題であると同時に、労働法の問題です。医学と法務の両面から整理できて初めて、貴社の実務に耐えうる産業医意見となります。

03 ストレスチェック | 約4分

ストレスチェック制度の形骸化を防ぐには — 高ストレス者面談後の実務

ストレスチェック制度は導入から10年が経過しましたが、「実施しているものの、結果を活用しきれていない」という声を多くいただきます。高ストレス者面談後に何を書き、何を残すか。ここに制度の実効性を分ける鍵があります。

04 予防法務 | 約5分

産業医活動は「予防法務」でもあります — 紛争化しないための日常業務

労務紛争の多くは、突発的に発生するのではなく、日常業務の記録の不備から生じます。産業医が日々作成する書面は、貴社にとっての「予防法務」の資産となります。

05 契約形態 | 約4分

産業医の中立性は、契約形態によって担保されます — 独立系事務所を選ぶ意味

産業医の意見に忖度を感じたことはありませんか。中立性は、個々の医師の姿勢だけで担保されるものではなく、契約形態と収入構造によって支えられるものです。

01 産業医論 | 約4分

産業医は「イエスマン」ではありません — 安全配慮義務の履行補助者としての役割

企業ご担当者から「産業医は会社の味方か、従業員の味方か」と問われることがあります。私は、いずれでもなく、貴社の安全配慮義務を支える履行補助者であるとお答えしています。

労働契約法第5条は、使用者が労働者の生命と身体の安全に配慮する義務、いわゆる「安全配慮義務」を負うことを定めています。この義務は、判例上、非常に広範に理解されており、健康障害の防止、労働時間管理、メンタルヘルス対応、ハラスメント防止など、事業運営のあらゆる場面に及びます。

産業医は、この安全配慮義務の履行を、医学的な側面から支える存在です。「会社の側」でも「従業員の側」でもなく、貴社が法令上果たすべき義務を、専門的知見をもって適切に履行できるよう補助する。それが産業医の位置づけであると、私は考えています。

このことは、実務にも直接影響します。たとえば、長時間労働者への面接指導の場面。面接指導そのものは労働安全衛生法上の義務ですが、その結果として就業上の措置が必要と判断された場合、その意見を書面で明確に示すことは、貴社が安全配慮義務を果たした証跡ともなります。逆に、産業医が形式的な面談だけで済ませ、必要な意見を示さなかった場合、貴社は「産業医の意見に基づいて適切な措置を取った」という説明ができなくなります。

産業医は、会社に対しても、労働者に対しても、忖度なく意見を述べることが求められる立場です。当事務所は、その役割を独立系事務所という契約形態のもとで、忠実に果たすことを目指しています。

執筆:代表産業医 中村 一

02 予防法務 | 約4分

医学だけでは解けない問題があります — 産業医に法務リテラシーが必要な理由

休職期間の設計、復職判定の書面化、就業上の措置の記録。これらは医学の問題であると同時に、労働法の問題です。医学と法務の両面から整理できて初めて、貴社の実務に耐えうる産業医意見となります。

産業医の業務のなかには、医学的判断だけでは完結しない領域が数多く存在します。

たとえば、私傷病休職者の復職判定。主治医の診断書には「復職可能」とだけ記載されているケースが少なくありません。しかし、この「復職可能」が意味するものは、日常生活が送れる水準なのか、通勤に耐えうる水準なのか、フルタイム勤務に耐えうる水準なのか、原職相当の業務遂行に耐えうる水準なのか。医学的な言葉と、労務管理上求められる判断基準の間には、しばしば大きな隔たりがあります。

産業医は、この隔たりを埋める役割を担います。就業規則上の復職判定基準に照らし、主治医意見と面談所見を突き合わせ、業務適合性の観点から意見を書面化する。この書面が、後日万一の紛争において、貴社が復職判定を適切に行った証拠となります。

また、就業上の措置の記載方法にも、法務的な観点が求められます。「軽減勤務が望ましい」といった曖昧な記載では、企業として何を実行すべきかが不明確です。労働時間、業務内容、期間、次回評価時期を、労働安全衛生法および就業規則の枠組みに沿って明示すること。こうした記載様式の細部が、実務の質を決定します。

当事務所の代表産業医は、名古屋大学法科大学院で労働法を学び、行政書士試験にも合格しています。医学と法務の両面から書面を整えることで、貴社の実務を支えます。

執筆:代表産業医 中村 一

03 ストレスチェック | 約4分

ストレスチェック制度の形骸化を防ぐには — 高ストレス者面談後の実務

ストレスチェック制度は導入から10年が経過しましたが、「実施しているものの、結果を活用しきれていない」という声を多くいただきます。高ストレス者面談後に何を書き、何を残すか。ここに制度の実効性を分ける鍵があります。

ストレスチェック制度は、労働安全衛生法第66条の10に基づき、常時使用する労働者50人以上の事業場に実施が義務づけられています。しかし、実施率と、実施後の活用度には、大きな乖離があるのが現状です。

高ストレス者と判定された労働者から面接指導の申し出があった場合、産業医は面接指導を実施し、その結果を事業者に対して意見として述べる義務を負います。この「意見」の質が、制度の実効性を大きく左右します。

私が意見書を作成する際に留意しているのは、以下の点です。第一に、面接指導で得られた所見のうち、事業者に共有すべき情報と、産業医が個人情報として保持すべき情報を、明確に区別すること。第二に、就業上の措置が必要な場合、その内容を労働時間・業務内容・期間の観点から具体化すること。第三に、次回評価時期を明示し、フォローアップの仕組みを組み込むこと。

意見書のなかには、事業者側で実行不可能な内容や、逆に労働者の希望を全面的に反映しただけの内容が散見されます。しかし、産業医意見書は、労働安全衛生法上の公的な意見表明であり、後日の紛争において重要な証拠となります。実行可能で、業務適合性の観点から根拠のある意見を、書面として整えて提供することが、産業医の職責の中核です。

貴社のストレスチェック制度が形骸化しないよう、実施者としての関与、高ストレス者面談、事後措置の書面化まで、一貫して対応いたします。なお、令和10年4月1日からは、労働者数50人未満の事業場についても、ストレスチェック実施が義務化されます。事前の準備についてもご相談ください。

執筆:代表産業医 中村 一

04 予防法務 | 約5分

産業医活動は「予防法務」でもあります — 紛争化しないための日常業務

労務紛争の多くは、突発的に発生するのではなく、日常業務の記録の不備から生じます。産業医が日々作成する書面は、貴社にとっての「予防法務」の資産となります。

労働訴訟の判決文を読むと、しばしば「産業医の意見書に、就業上の措置に関する具体的な記載がなかった」「面接指導の記録が残されていなかった」「主治医意見と産業医意見の関係が整理されていなかった」といった認定に出会います。日常業務の記録の不備が、紛争化した際の企業側の立証を困難にしているのです。

産業医が作成する書面は、単なる医学的記録ではなく、貴社の労務管理体制の一部を構成する重要な資料です。就業判定、健康診断事後措置、休復職判断、面接指導、面談記録。これらの書面が、労働安全衛生法および就業規則の枠組みに沿って整えられているかどうかで、後日の紛争リスクは大きく変わります。

当事務所では、この観点から、以下の書面業務を丁寧に行っています。就業上の措置に関する意見書には、業務内容・労働時間・期間・次回評価時期を明記します。休職判定・復職判定の意見書には、主治医意見の要旨と、産業医としての業務適合性判断を、対応する形で記載します。健康診断事後措置の記録は、判定区分ごとに就業上の措置の要否と根拠を明示します。

これらは、決して大がかりな作業ではありません。日常業務のなかで、書面の形式を意識するだけで、多くは実現できます。しかし、この積み重ねが、貴社を将来の紛争リスクから守ります。「予防法務」としての産業医活動を、当事務所は日々実践しています。

執筆:代表産業医 中村 一

05 契約形態 | 約4分

産業医の中立性は、契約形態によって担保されます — 独立系事務所を選ぶ意味

産業医の意見に忖度を感じたことはありませんか。中立性は、個々の医師の姿勢だけで担保されるものではなく、契約形態と収入構造によって支えられるものです。

「産業医の意見が、いつも会社側の意向に沿っている気がする」という声を、労働組合の担当者や、社労士の先生方から伺うことがあります。逆に、「産業医が労働者側に立ちすぎて、会社としての判断がしにくい」という声もあります。

産業医の中立性は、医師個人の職業倫理だけでは、なかなか担保できません。専属産業医として一社から給与を得る立場では、雇用関係の存在そのものが、判断の独立性に構造的な制約を課します。また、特定の団体に所属し、あるいは特定の立場と継続的な関係を持つ場合には、その立場の視点に判断が引きずられるという構造的な課題が、程度の差はあれ生じ得ます。

独立系の嘱託・顧問という契約形態は、この構造的な問題に対する一つの答えです。当事務所は、40社超・60事業所超の顧問先に支えられているため、個々の顧問先のご要望に必要以上に迎合する必要がありません。医学的な観点と、労働法の枠組みに照らして、忖度のない意見を述べることができます。

もう一つ、当事務所が重視しているのは、報酬体系の全面公開です。基本報酬、追加対応、就業判定、衛生講話の料金を、すべてホームページに公開しています。「相場が分からない」「追加費用が読めない」といった不透明さは、産業医と企業の信頼関係を損ないます。透明な料金体系のもとで、契約前提のないご相談も含めて、お気軽にお声がけください。

執筆:代表産業医 中村 一

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※ 本ページのコラムは、一般的な見解と実務上の考え方をご紹介するものであり、個別の事案に対する法的・医学的助言ではありません。実際の対応は、個別にご相談のうえご判断ください。